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パイワン族及びルカイ族の石板屋集落

パイワン族及びルカイ族の石板屋集落

基本説明

対象地域:代表的な老七佳というエリアを取り上げます。七佳旧社の石板屋集落は、屏東県春日郷北部の石可見山より西の海抜約570メートルのところにあり、現在、完全な状態の石板屋が約50軒あります。ここが、先住民の石板屋集落が最もよく保存されている場所です。


環境紹介

台湾のパイワン族の建築様式としては、石板建築と草ぶき屋根建築の2種類があり、おおよその分布は、士文渓という河を境に分かれています。七佳旧社から士文渓までは山を一つ隔てただけの距離で、居住建築としては、母集団であるpaumaumaqの建築様式を踏襲しています。このため本文では、パイワン族の七佳旧社を代表的な集落として、以下にパイワン族の石板建築の特徴を紹介します。

· 建材

1、石材:

 採石場が、石板屋のある集落からは歩いて約2時間かかる下方の七佳渓上流にあるため、石板の建材調達は非常に困難な作業となります。黒い石板に触れるたび、先人が苦労して、大きな石を切り出し、石板を一枚一枚河から運び上げたことが頭に浮かび、先人の根気と忍耐強さに対し、尊敬の念が生まれます。また、これが同族の人々の石板屋文化に対する思いをより深いものにしています。


 石板屋の建材は地元で調達しますが、石を選定する段階からこだわりがあります。一般的には、石材は硬さで区別します。硬く割れにくい石板はoqalai(硬石)と呼ばれ、黒く、比較的重いこと、光を反射すること、たたくと音が響き、密度が高いことが特徴です。祖霊柱(頭目や貴族の家に設置された先祖をかたどった柱)や屋根、寝台、大広間の床石、前壁の仕切りなどに適しています。一方、比較的割れやすい石材は、色が薄くて軽く、たたいた時の音が鈍いこと、触ると細かい欠片が剥がれるといった特徴があり、このような石をvavaian(軟石)と呼びます。軟石はもろいため、通常は、石板屋の中でも頻繁には利用しない場所、例えば、かまどや石を積み重ねた壁、屋根のフチなどに用います。或いは、村道の地面の石板に使うこともあります。七佳の集落では、創意工夫をこらして石板を利用し、最大限に活用しているのです。


2、木材

 木材の選択にもまたこだわりがあります。梁は屋根の石板を支える重要な役割があるため、慎重に木材を選定する必要があります。アカギ、クスノキ、ケヤキ、タイワンオガタマノキ、ヒノキ、ナンボクなどはすべて、1979年に林務局が伐採して造林するまでは、至るところで手に入る建材でしたが、造林されてからは、原生林が徐々になくなっていきました。このため、老七佳の石板屋に現在残る梁の大部分は、百年以上経った建材で、非常によく保存されているものです。当時、石板屋を建てるには、石材の収集や整理、切り出しのほか、木材の探索や伐採、運搬、断裁、組み立てなどを、機械などがない中で、先人が自分たちの手と知恵を使ってこなし、必要な木材を集落まで少しずつ運ばなければなりませんでした。石板屋は全村民の協力、パイワン族の団結の象徴でもあります。


選出理由

パイワン族とルカイ族の石板屋集落は、パイワン族とルカイ族の歴史文化遺産を完全な形で保存しており、人類学や建築学などの学者の研究対象として興味を引き付けています。エリア内の集落と山の自然の景観といった文化資源が、有機的に結合し、分かりやい配置で、よく保存されていることで、パイワン族とルカイ族の伝統的な集落や家屋、家屋の前庭、採石場、水源地、伝統的な領域が如実に記録されているということが、世界遺産登録基準第2項に合致します。


 日本統治時代に住民は村を平地に移したこともあり、住民は現在、交通の便が悪く、電気が通っていない石板屋を、作業拠点やレジャーに時折利用するだけになっています。このため、パイワン族とルカイ族の石板屋集落は、長年天日にさらされ、もろい状態になっていることが、世界遺産登録基準第5項に合致します。