メインのコンテンツブロックにジャンプします

卑南遺跡及び都蘭山

卑南遺跡及び都蘭山

基本説明

卑南遺跡は台東市南王里にあり、台東市の中心地から西北方向へ約5~6㎞の距離です。卑南山の東南端に位置する山麓、すなわち卑南渓の河岸段丘(かがんだんきゅう)上に位置します。東北方向に都蘭山を望み、広い面積を占めます。

対象地域:卑南遺跡は現在のところ台湾最大の先史時代の遺跡です。総面積は約80ヘクタール、そのうち重要部分は少なくとも20~30ヘクタールです。緩衝地域は卑南渓、卑南山及び卑南文化人にとっての聖なる山「都蘭山」を含みます。


環境紹介

花東縦谷は大きな一つの断層です。花東縦谷の西側はユーラシアプレートに属し、中央山脈が高くそびえ立ちます。東側はフィリピン海プレートに属し、その地質はユーラシアプレートと全く異なり、主に海底火山やサンゴ礁、海底に沈殿した堆積物によって構成されています。海岸山脈の南端には、海岸山脈を構成する地層の一つ、卑南山礫岩(れきがん)と利吉泥岩(利吉層とも呼ばれる)があり、卑南渓を隔てて向かい合っています。地質上、この2つの地層はいずれも、台湾でプレート構造運動が行われたことの証拠となっています。


卑南山は海抜411メートルの山で、その上にはむき出しになった露頭岩が多く見られますが、これはいずれも卑南礫岩です。2つのプレートが衝突したとき、中央山脈が急速に押し上げられたために、高い山から流れ下りる渓流の勢いが増しました。渓流による大地の侵食、土砂の運搬、そして急速な堆積に加え、地殻の隆起によって卑南山台地が形成されました。利吉泥岩は、2つのプレートが沈み込む前弧海盆(fore-arc basin)の深海堆積物です。プレートの衝突によって大陸斜面(continental slope)の物質が崩壊し、形成されたオリストストローム(さまざまな大きさの小岩体や礫が泥質基質に含まれた地質体)です。このため利吉泥岩には様々な外来の岩の塊が含まれています。卑南山礫岩と利吉泥岩はいずれも花東縦谷を構成する地形に属します。その岩層の特性によって生まれた特殊な悪地地形は、花東縦谷国家風景区における重要な地理景観資源となっています。


卑南文化人は山と水の近くに集落を築きました。つまり、卑南山を背に、前方に卑南渓を望む場所です。集落の南側には、水草が豊富に生い茂る「台東沖積三角洲平原(三角州を持つ沖積平野)」が広がっています。卑南文化人の埋葬エリアにある1500基あまりの石棺は、その長辺がいずれも北から北北東-南南西から南の方角を向いています。この「帯状配置」の特徴と、地上の建築物の配置を見ると、卑南文化人の集落において家屋の門はおそらく東南東、すなわち卑南渓が太平洋へと流れ込む方向を向いていた可能性があります。


卑南渓は現在の台東県池上郷から花東縦谷に沿って南へ流れ下ります。その途中、中央山脈の東側の各支流と合流します。現在の台東県鹿野郷や台東県卑南郷嘉豊村のあたりで鹿野渓と合流すると、川の水かさと、大地の浸食が大きく増えます。川の東側にある利吉層は比較的やわらかいため、川の水は絶えず東に向かって浸食し、それによりダイナミックな景観の「利吉悪地」が形成されました。卑南文化人の集落から北を望むと、海岸山脈を構成する「新港山」以南としては最高峰の「都蘭山」が見えます。海底火山の爆発で飛び出した火山砕屑物が固まってできた火山集塊岩で、硬い素材でできています。山頂には原生の広葉樹林が広がり、自然環境は良好で、サファイアの産地としても知られています。


卑南文化公園は草木を植えるに当たり、四季の変化を感じられ、鳥や蝶を呼びやすい特性のある原生植物を修景植物に選びました。このため四季を通して鳥や蝶が飛び交う様子が見られます。特に鳥類が多く集まるのが、この公園の大きな特徴の一つです。けたたましく鳴くタイワンオナガ、美しい鳴き声に端正な姿をしたメジロ、いたずら好きな台湾固有種のクロガシラ、オオカンムリワシ、コウライキジ、アマサギ、タイワンヒバリ、色鮮やかな羽を持つゴシキチョウなどが、いずれも公園に生息しています。毎年やってきて繁殖活動を行う鳥類としては、希少種の留鳥、ズグロミゾゴイがいて驚かされます。


9月になって大量のアカモズがやってくると、越冬する渡り鳥たちの到来の幕開けです。空を見上げると、おそらくアカハラダカやサシバが南下してくる情景が目に映るでしょう。鳥類だけではありません。タイワンザルがたまに、シャカトウ(バンレイシ)を求めて近隣の果樹園に侵入することもあります。そこに生息する動物や、エサを求めてやってくる動物の状況から、この公園の生態環境が動物たちに受け入れられていることが分かります。


卑南文化公園は、遺跡の発掘現場をそのまま展示する、台湾初の遺跡公園です。計画の初期段階で、李瑞宗教授に委託して、卑南山付近に自生する植物の調査と研究をしてもらいました。この研究の主な目的は、適切な台湾の原生植物を選択し、できる限り遺跡の植物景観を復元することにありました。先史時代の集落を取り巻く自然生態を作り上げることで、当時の卑南文化の植物景観を再現しようとしたのです。


このほか、オーストロネシア系諸族が常用する植物を植え、この遺跡公園を民族植物学の野外展示場にしたいとも考えました。前述の構想からもわかるように、卑南文化公園の植物栽培は、原生、遺跡、民族文化などの結合を前提に取捨選択を行っています。現在、この公園では至るところに、海抜の低い場所に生息する台湾の原生植物を見ることができます。ここにはシダ植物、裸子植物、双子葉植物、単子葉植物など合計62科139種が植えられています。これらの原生植物は、公園のさまざまな企画段階において、徐々に遺跡のある土地に植えられたもので、台湾本土の植物の多様性を表現するものとなっています。


選出理由

出土した石板棺、玉器、大規模な集落遺跡は、台湾では最大規模のものです。世界各国を見てもあまり例がありません。学術的意義から見ても、先史文化を代表する卑南遺跡は、台湾西海岸で見つかった若干の先史文化遺跡と相通じるところがあるだけでなく、現存するオーストロネシア系諸族の文化とも関連するところがあります。台湾先史文化の全体的な発展の文脈から見ても重要な一角を占めるものであり、世界遺産登録基準第3項に合致します。


また、総体価値が及ぶ範囲が非常に広く、有形の遺構、出土品、標本もあれば、無形の文化遺産もあります。いずれも極めて高い総体価値と重要性を持つもので、世界遺産登録基準第6項に合致します。