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創業100年超の店を守り続ける金細工職人、鍾春忠さん=ドキュメンタリー

  • 日付:2018-07-31
創業100年超の店を守り続ける金細工職人、鍾春忠さん=ドキュメンタリー

台湾の非政府組織(NGO)「中華文化総会」は昨年から、伝統を守り続ける職人にスポットを当てた35分間のドキュメンタリー「匠人魂」シリーズを制作し、インターネットで公開しています。最新作「千金一刻」では、日本統治時代の1910年創業の「金和貴銀楼」(台北市万華区)の3代目、鍾春忠さん(75)を主役に、台湾の味わいをかたくなに守る職人の生き方を伝えています。


銀楼とは、中華圏によく見られる、金を中心に扱う個人経営の貴金属店です。もともとは自作の装飾品を販売するのが主流でしたが、1980年代以降は機械化が進み、手作り商品は徐々に衰退していきました。ですが、鍾さんが営む金和貴銀楼は現在でも手作りにこだわり続け、店が位置する万華区一帯では唯一の手作りの店となっています。


祖父の代から受け継いだ精神と技法を守り続ける鍾さん。金細工職人として今でも大切にしているのは、日本統治時代に使われ始めた「花簿」と呼ばれる見本帳だといいます。かんざしやブレスレット、ネクタイピンなどのデザインが記されており、顧客はこれを参考に注文していたそうです。鍾さんは、図案はどれも精緻であるため、手作業でなければ細部の美しさを表現することはできないと語ります。


もう一つ、鍾さんを支えているものがあります。それは、父親が生前よく言っていた「カネ本位ではなく、金本位」という一言です。起伏が激しい金相場とは一線を画し、職人は職人らしく本分を守って生きるべきという態度を指しているそうです。


作業場で働く鍾さんの姿は、台湾映画「1010」(2011)でも見ることができます。「1010」は台湾の映画監督20人が5分間ずつ制作を担当した作品で、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督が担当した「黄金之弦」に金和貴銀楼が登場しました。鍾さんは、今でも日本や香港の観光客がわざわざ店を訪れると語り、ほほ笑みを浮かべました。