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「雕釉」の美-陶芸の大家 | 蘇世雄

  • 日付:2017-02-18
「雕釉」の美-陶芸の大家 | 蘇世雄

蘇世雄は1935年、台南生まれ。台湾で初めて、「雕釉」という技法を編み出した陶芸の大家です。陶磁器の創作に携わって30年以上になる蘇世雄は終始一貫して、技術と全体的な工芸としての総合的な美しさによる創作を追求。伝統的な施釉法と彫刻の技法を融合し、独特の作風を発展させました。2010年、第4回「国家工芸成就奨」を受賞しています。


幼少のころから美術を好んだ蘇世雄が、陶磁器への興味を持ったきっかけは、陶磁器工場の見学でした。高校卒業後は、当時の台湾で唯一、芸術関係を学べる大学だった台湾師範大学芸術学科に進学。卒業後は応用美術とデザインの教員として、65歳の定年まで勤め上げました。


蘇世雄の陶芸は全て独学によるもので、この三十数年、台湾内外の専門書や陶芸の展覧会、陶芸作家のワークショップ見学などで学んできたものです。台湾の陶芸界には派閥が二つあり、一つは伝統的な造形と釉薬の色を固く守っているグループ。もう一つは、欧米の影響を受けた西洋陶芸のグループです。蘇世雄は今まで常に、どのようにして、伝統文化を保ちつつも、その時代のイノベーションを加えるべきかを考え、独自の作風を作り上げました。


伝統工芸を伝承する蘇世雄の作品は、難度の高い工法を追求すると同時に、個人の感情も表現されており、現代工芸と芸術の見事な融合と言えます。蘇世雄独自の「雕釉」技法は、素焼きした陶器に、デザインに基づき釉薬を多層にかけたのち、各層の模様と色を研磨して削り出し、1230度の高温で本焼き。こうすることで、変化に富んだ模様と、多層の釉薬による素晴らしい効果が生まれます。蘇世雄の雕釉の一連の作品は、伝統的な造形に、いかにして、視覚的に新しい印象を与えるイノベーションを加えるかが考えられたものです。


蘇世雄は、作品創作のインスピレーションを、日常生活から得ています。自然や草花を好む蘇世雄はよく、台湾の四季折々の植物を陶芸に彫り込みます。若いころ、染物工場で染色と生地の図案デザインを行っていた経験を生かし、ムラのない美しい図案を生み出すのです。


蘇世雄は、陶芸には技巧だけでなく、美に関する体験を織り込む必要があるとしながらも、最も大切なことは、創造の自由と楽しみを追求することだと指摘。このため、子どもが好きなように創作する陶芸を支援しています。既に高齢の蘇世雄ですが、日々、数多くの創作を続けており、「どの職業でもいつかは定年の日が来るが、芸術家は終わりなく、創作を続けられることが幸せだ」と述べています。