メインのコンテンツブロックにジャンプします

台湾の民主化の歩みを記録する写真家 | 宋隆泉

  • 日付:2019-07-18
台湾の民主化の歩みを記録する写真家 | 宋隆泉

宋隆泉は、台湾の民主化運動を記録してきた写真家です。雑誌『噶瑪蘭』や『新潮流』、『自由時代』といった、台湾のかつての党外(いわゆる国民党に批判的な勢力)の出版物の撮影記者を務め、台湾の人々が、民主、自由を勝ち取る一瞬一瞬をカメラで写し取り、記録すべき台湾の歴史的場面を残しています。


宋隆泉の若いころに美麗島事件(反体制運動弾圧事件)がありました。宋隆泉は幼いころから、戒厳令下の党外雑誌を好んで読んでいましたが、こうした雑誌のイラストはイマイチで、素晴らしい映像記録もないと感じていました。しかも、表紙は多くが手書きだったため、宋隆泉は、党外に映像で記録を残す人がいないのなら、自分がやろうと考えたのです。そして、美麗島事件後、宋隆泉は、撮影技術を磨くことを決意。党外雑誌のために撮影することになりました。


その頃から、宋隆泉はカメラで台湾を記録していくことを志し、荷物を背負って、台湾の隅々まで訪ねまわりました。こうした旅について、宋隆泉は、自分にとってとても重要な郷土意識を啓蒙するものだったと振り返ります。台湾をきちんと撮影するには、台湾がどのような姿なのかを自ら理解しなければなりません。そのために記録者・報道者の道に進みました。


29歳の時、雑誌『噶瑪蘭』の仕事に就き、党外運動に身を投じます。社会運動が行われているところがあれば、そこに出掛けていき、数年にわたって、数多くの悲惨な出来事を写し出してきました。その後、民主活動家の鄭南榕の創刊した雑誌『自由時代』に招かれ、撮影編集と美術指導を担当します。


宋隆泉の写真は全て、台湾人が民主、自由、人権を勝ち取り、独裁政治に恐れず立ち向かった姿を写し出したものです。宋隆泉は、当時の台湾社会の脈動を忠実に記録し、カメラに収めてきました。宋隆泉が全過程に関わって残してきた写真はまた、勇敢な台湾人が生命を懸けて戦った社会運動を後世に残す最大の証しでもあります。


「民主台湾撮影展:存在或不存在」は、宋隆泉が2018年に開催した国際巡回個展です。開催の動機は、撮影の仕事に従事して何年も経ち、ファイルを整理していた時、忘れ去られた写真がたくさん見つかったものの、どの写真も重要な瞬間、例えば、国会改選や第4原発反対、戒厳令解除など―を記録したものだという考えによるものです。


宋隆泉の写真展には大きなテーマの柱が2本あります。一つは「民主行動」で、228和平記念日の全島デモ行進や、戒厳令解除、行動する思想家・鄭南榕など。もう一つは「大地の歌」で、歌仔戯の物語や、故郷である南方澳の記憶、郷土の情景写真です。


宋隆泉は以前、次のように話しています。「記憶は失われるが、きちんと保存された映像は、常に人々の思い出を呼び起こすことができる」。宋隆泉は写真展を通して、民主は台湾人が戦い、苦しみに耐え抜いて獲得したものであり、決して天から降ってきたように、簡単に手にできたものではないということを伝えていきたいと考えています。