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水金九鉱業遺跡

水金九鉱業遺跡

基本説明

方位:水金九鉱業遺跡は、「東北角」と呼ばれる台湾の北東部の海沿いに位置し、北は太平洋に面し、東に無耳茶壺山、西に基隆山、南に草山を控え、南西は九フンに接する、山と海に囲まれた場所です。(フン=にんべんに九)

対象地域:金瓜石鉱山は新北市瑞芳区の北東部に位置し、金瓜石の集落を中心に、緩衝地域は基隆山、九フン、金瓜石(本山)、武丹坑、草山、鶏母嶺にまで及び、総面積は約70平方キロメートルあります。


環境紹介

本エリアの地層は、北東-南西走向となっており、その地勢は地質の特性を受け、断層、向斜、背斜などの構造が見られます。このことから、このエリアが激しい地殻変動の影響を受けてきたことを示しています。本エリアではデイサイトが見られるほか、地層中には金、銅を豊富に含んでいます。そして、鉱脈が広がっているほか、鉱物の多様性と鉱化作用により、特殊な地質景観が広がり、天然の地質学教室となっています。


金瓜石の鉱体は、主に中新世に堆積岩に胚胎し、一部分は火成岩体となっています。堆積岩層は2500万年前から1000万年前に、海底で堆積して形成されました。およそ1000万年前から800万年前に、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが衝突し、押し上げられたことにより、さまざまなレベルの地殻運動が次々に発生しました。200万年前、褶曲(しゅうきょく)、断層などの地形が形成され、陸地がゆっくり隆起していきました。


約170万年前から90万年前の更新世の時代、このエリアではマグマ活動が発生し、いくつかの火成岩が岩体に貫入したほか、噴出岩が形成されました。現在の基隆山、牡丹山、金瓜石(本山)などは火成岩が岩体に貫入した貫入岩、草山、鶏母嶺などは噴出岩です。その後、このエリアでは頻繁な断層活動が発生し、マグマ活動の後期の「熱水変質作用」とは、地下の高温の熱水が、断層や小さな割れ目を上昇する過程で、金鉱体を形成する作用のことです。


金瓜石鉱山を中心とするエリアは、標高100メートルから500メートル前後の丘陵地に位置し、最も高い基隆山は587メートルです。 金瓜石の集落の四方を茶壺山、草山、半平山が囲み、いずれも地形の特色となっています。金瓜石の集落は標高200メートルから325メートルと、その標高は決して高くありませんが、丘陵地に位置すること、また切り立った渓谷になっていることから、傾斜は急で険しくなっています。


金瓜石の集落を中心としたエリアの動物の分布は、その地形と植生によって異なりますが、中でも鳥類が最も特色があるとされています。野鳥学会の調査によると、本エリアではこれまで下記の鳥類が確認されています。


選出理由

水金九鉱業遺跡は、産業遺産の姿、豊かな歴史、文化遺跡が完全な形で保存されており、経済、歴史、地質、植物など各分野の研究者の関心を集めています。エリア内の人文資源としては、集落の景観、歴史を感じる空間、太子賓館、日本建築の宿舎群、黄金神社、勧済堂など民俗・宗教に関するものがあります。自然景観、地形と水景の資源については、鉱山エリア、 坑口、輸送施設の動線や製錬所などが、鉱業の文化遺産となっており、台湾の鉱業の発展史を生き生きと記録しています。こうした点は、世界遺産登録基準第2項を満たすものと考えます。


鉱山閉山後、近年、集落の生活空間は次第に取り壊され、日本人高級幹部用の宿舎などは、長年、修復が行われなかったため、一部は解体されました。鉱山集落にも、景観にそぐわない西洋風の建物が建築されるようになっています。また、かつて金瓜石の集落を結ぶ動脈となっていたインクライン、索道の再現は困難だと言えます。社会と経済の急激な発展の中、金瓜石の集落は非常に弱り切った状態となっており、この点については、世界遺産登録基準第5項に合致します。