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台湾鉄路管理局旧山線

台湾鉄路管理局旧山線

基本説明

台湾鉄路管理局旧山線は、地図上では苗栗県三義郷からうねうねと台中市后里区まで続く路線で、沿線には勝興、泰安の2旧駅と龍騰断橋、鯉魚潭橋、大安渓橋の3鉄橋、8本のトンネルがあり、多様な風景が広がります。
対象地域:台湾鉄路管理局旧山線は大安渓をまたいだ南北両岸、苗栗県と台中市の境にあり、全長は約15.9キロメートル、沿線両側の緩衝地域の面積は128.29平方キロメートルに及びます。


環境紹介

台湾鉄路管理局旧山線は、三義から后里までうねうねと2つの駅、2基のトラス橋、8本のトンネルを通り、沿線では山を貫く多様な景観が楽しめます。旧山線は暖気と寒気がぶつかる気候境界に位置するため、春と秋には勝興以北で濃霧に包まれていても、同駅以南では明るい日差しが注ぐ、台湾でも特徴的な鉄道路線の一つです。自然・地理景観の特色は三義郷内で見られます。東西に火焔山と三角山の丘陵がそびえ、入り口は通路のような谷になっており、栄えた市街地を通って細長い谷を突き進むと、低い山の稜線が現れ、ソウシジュ、アブラギリ、さまざまな果樹や雑木などが生い茂る赤土の丘陵地を越えると、大安渓、苗栗県と台中市の境でやっと平坦な地形にたどり着きます。


標高差は約350から500メートル。苗栗県大湖郷の山地と隣り合わせの東側は高地となっており、西側の土地は比較的低くなだらかになっています。后里区は后里台地の東側にあり、急峻な山が迫っています。西側は傾斜の緩い台地になっており、標高は220から230メートル。南東から西方向に傾斜しています。后里台地は大安(北側)、大甲(南側)両渓の形成した扇状地です。丘陵や山の起伏が連なる三義郷の地理的環境と比較すると、非常に平坦だと言えるでしょう。


旧山線沿線は生態資源も豊富です。特殊な種類がいるわけではありませんが、開発状況や生態系、海抜など周辺環境に適応した特徴が見られ、大安渓や大甲渓の川には台湾鮠(Pseudobagrus brevianalis taiwanensis)、中台リョウ(Leuciscus medius )、叉尾リョウ(Leuciscus schisturus )などが、水田にはドジョウ、カラドジョウ、タウナギが生息しています。叉尾リョウは比較的珍しい種類ですが、その他は台湾ではよく見られる魚です。両生類や爬虫類ではアジアヒキガエル、ババトラフガエル、タイワンガエル、金線蛙(Pelophylax fukienensis)、ヒメアマガエル、ヘリグロヒキガエル、イヌガエル、ヌマガエル、シナアマガエル、アマガサヘビ、ヤモリ、ナンダ、コブラなどが見られます。(リョウ=綾の糸へんを魚へんに)


この地域に生息する鳥類も台湾で比較的よく見られるものが多いですが、希少種や固有種のオシドリ、ミヤマテッケイなども見られます。また哺乳類ではその多くが小型の動物です。チョウは約110種類が見られ、アゲハ、シロチョウ、マダラチョウ、ジャノメチョウ、ワモンチョウ、タテハチョウ、シジミチョウ、セセリチョウなどが見られます。三義、后里は開発の進んだ丘陵地で、標高は高くありませんが、動植物などの生態資源は豊かです。そのほとんどは一般的なもので、特殊な種類はいません。標高600メートル以下は熱帯雨林となっています。高温多雨の気候で、年間を通した気温差が小さく、年平均気温は25から26度、土壌は赤黄色土で年間降水量は2000から4000ミリ。植物は多層的に分布しており、種類が豊富なことが特徴とされています。


同地域の植物の分布は高木層、小高木層、低木層、つる植物、地被植物、着生植物、板根植物、幹花植物などです。これらの植物群以外にも旧山線沿線の三義駅や后里駅一帯は農業や竹林など人の手によって植えられた植物の特色が見られ、勝興、龍騰断橋からはそのままの熱帯雨林の姿を見ることができます。


台湾鉄路管理局旧山線を世界遺産に登録されているスイス・アルプスのユングフラウとアレッチのユングフラウ鉄道と比べてみましょう。ユングフラウ鉄道の終着駅ユングフラウヨッホは海抜3454メートル地点にあり、ヨーロッパ最高地点にある鉄道駅で、山頂からアレッチ氷河の壮大な風景が楽しめます。2001年末に鉄道と氷河は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界自然遺産」に登録されました。
ユングフラウ鉄道は1896年に起工。16年の歳月を経て1912年に正式開通しました。全線の4分の3が氷河の下にある岩盤のトンネルで、工事は困難を極めました。海抜567メートルの地点から海抜3454メートルまで駆け上り、落差は2887メートルにも達しますが、列車がわずか32.6キロメートルで登りつめる姿は、スイスの鉄道技術の偉大さを感じずにはいられません。
台湾鉄路管理局旧山線は1908年に完成。鉄道は登坂時に数々の制約を受けるので、山中を右へ左へ約16キロメートルうねった後、坂道に挑みます。同線の最高地点は勝興駅で、構内には「海抜402.36メートル台湾鉄道最高地点」の記念碑が建てられています。古くは山線の上下線の列車が行き違いをし、要所となっていました。旧山線は三義から后里まで全長15.9キロメートル。関刀山、火炎山を通り、8本のトンネルと谷を越える魚藤坪橋、内社川橋、大安渓鉄橋を南に進み、台中市の后里にたどり着くと地形は平坦になります。沿線にある勝興駅と泰安駅はそれぞれ苗栗県の「県定古跡」と台中市の「市定古跡」に指定されています。


台湾鉄路管理局旧山線がユングフラウ鉄道と最も異なる点は、ただの鉄道ではなく、時空の交錯した歴史的路線であり、豊かな自然と生態系にも育まれていることから、世界複合遺産の登録基準を満たしていることです。


選出理由

旧山線が完成した1908年当時、架橋技術が未熟だった中、上流の比較的狭い河床と比較的固い地盤を利用して、山を縫い、橋で川を越える難工事に挑戦しました。その工事は台湾の鉄道工事技術史上、最大の勾配、最もきついカーブ、最長のトラス橋、最長のトンネル群などの建設が伴う偉大なもので、世界遺産登録基準第1項に当てはまります。旧山線の東側は関刀山系、西側は火炎山系に面し、両側の丘陵が作り出した曲線と坂のある地形、質素な人々の暮らし、古跡、さまざまな植物が織り成す自然景観は、旧山線が台湾の鉄道文化の発展上または文化的・歴史的価値の上で2つとない地位を確立しており、こちらも世界遺産登録基準第2項に合致しています。