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澎湖玄武岩自然保護区

澎湖玄武岩自然保護区

基本説明 

方位:澎湖玄武岩自然保護区の地図上の正確な位置と地理座標は、澎湖諸島の東北海域にあり、小白沙嶼、鶏善嶼、錠鉤嶼の3つの玄武岩で出来た島を含みます。

対象地域:澎湖玄武岩自然保護区は台湾で唯一、離島にある自然保護区です。陸地面積は満潮時19.13ヘクタール、干潮時30.87ヘクタールです。緩衝地域は員貝嶼(26.53ヘクタール)、鳥嶼(27.76ヘクタール)、南面掛嶼(4.78ヘクタール)、屈爪嶼(14.19ヘクタール)、北礁(1.70ヘクタール)、活龍灘(新しく形成された砂洲で、海流の影響によって面積は定まっていない)など有人島または新しい砂洲を含み、総面積は74.96ヘクタールとなります。


環境紹介 

自然や地理景観の特色として、澎湖諸島の火山岩は「玄武岩質」に属します。若い玄武岩の特徴は、硬く、灰色がかった黒色で、肉眼では見えにくい斑晶を持ちます。同保護区の構造データと玄武岩の形成状態から、澎湖の溶岩は亀裂からの「洪水型」噴出だったと推断できます。このため澎湖玄武岩は「洪水玄武岩」と呼ぶことができます。


澎湖玄武岩自然保護区には錠鉤嶼、鶏善嶼、小白沙嶼の3つの無人島があります。1000万年以上前に海底から数回にわたって玄武岩質のマグマが噴出し、それが冷え固まって玄武岩が形成されました。急速な冷却により、玄武岩マグマが収縮したため、六角柱あるいは多角柱に近い柱状節理が生まれ、壮大な玄武岩の柱状景観が出現しました。


澎湖諸島は、海底の亀裂から地表に噴き出した溶岩が冷え固まって形成されました。このダイナミックな柱状玄武岩は自然に形成されたもので、傾いたもの、放射状になっているもの、倒れてしまったものなど、特異な景観を作り出しており、世界でもあまり例を見ません。澎湖玄武岩自然保護区のアルカリ玄武岩の中には、黄色あるいは緑色のかたまりを見つけることができます。これは、かんらん石や輝石などの鉱物が含まれているものです。


澎湖玄武岩自然保護区は、黒潮の支流、南シナ海の季節風、および潮汐流が交差するところに位置するため、近隣海域で魚類資源が豊富に育まれ、冬季の渡り鳥や通過鳥を多く引き付けています。夏季はアジサシの繁殖地となっています。保護種にも指定されている希少種としては、ベニアジサシ、コアジサシ、マミジロアジサシ、エリグロアジサシがこの地で生息し、繁殖活動を行っています。個体数は極めて多く、珍しい光景を作り出しています。近年の組織的な調査によると、澎湖地区で確認された鳥類の累積記録は14目40科157種に上りました。そのうち澎湖玄武岩自然保護区で確認された鳥類は種類が非常に多く、10目19科52種でした。同保護区の3つの島は面積が狭く、鳥たちが生息したり繁殖を行ったりする森林や湖がないため、クロサギやタイワンヒバリ(澎湖亜種)などの留鳥を除けば、ほかはすべて渡り鳥となっています。


夏季の渡り鳥としてはコアジサシ、マミジロアジサシ、エリグロアジサシ、ベニアジサシ、オオアジサシ、クロアジサシがいます。冬季の渡り鳥はチュウシャクシギ、キョウジョシギ、イソヒヨドリ、イソシギ、シロチドリなどで、その他は旅鳥や迷鳥です。ここで繁殖活動を行う夏季の渡り鳥ベニアジサシと、冬季の渡り鳥ハヤブサは、台湾では鳥類レッドリストに入っています。陸生動物は、植物に依存して生存しており、中でも多いのは昆虫です。同保護区に自生する植物の進化は、昆虫の遺伝子情報にも変化を及ぼしています。同保護区で見られる昆虫としては、ワタリバッタやチョウが多数を占めており、ワタリバッタではその一種、タイワンツチイナゴが最も多く、チョウではシルビアシジミ、ウラナミシジミ、ウスイロキチョウの仲間が多くなっています。


澎湖玄武岩自然保護区にある3つの島はいずれも正方形状の台地玄武岩です。もともとは岩がむき出しになった状態で、表面には何もありませんでした。長い歳月を経て風化した結果、溶岩台地に少量の玄武岩風化土が堆積し、これが徐々に生命を育みました。飛来する渡り鳥がもたらす糞便や、風に乗って飛んできた種子、海上から飛んできた様々なものなどが、この地域に少しずつ豊かな植物群落を作り上げていきました。


しかしながら、土地が狭い、風が強くて雨が少ない、水分の蒸発量が多い、土壌の塩化が進むなどの影響で、この地に根付くことができたのは、ごく少数の背が低い、匍匐(ほふく)性の植物のみでした。調査によると、この保護区に生息する植物は、小白沙嶼が14科22種、鶏善嶼が10科13種、錠鉤嶼が4科6種です。そのうち「澎湖」の名前を冠した原生植物には「澎湖大豆」や「澎湖爵床(キツネノマゴ科)」などがあります。このほかシマスベリヒユ、シロバナグンバイヒルガオ、ハマタイゲキなどはいずれも希少植物です。


「石滬(シーフ:追い込み漁の一種)」はサンゴ礁域で見られる独特な漁業文化の一つです。海外や台湾本島でも行われていますが、澎湖は最も密集しています。小白沙嶼の西南から北西の、水深の浅い海域にはサンゴ礁が広がっています。魚介類が豊富に生息しているので、近隣の住民がよくやってきて漁業を行っています。その西南方面に非常に珍しい「石滬」があります。鳥嶼の住民が18年の歳月をかけて完成させたものです。澎湖の「石滬」は全部で574基以上あります。大小さまざま、形もそれぞれに違います。現在は生息する魚介類が減ったため、かつてのような漁業の賑わいを見ることができないものの、「石滬」はエコツーリズムの重要な人文資産へと転身を遂げています。


澎湖玄武岩自然保護区の変化に富む、意気盛んな様子の溶岩景観は、イギリス北アイルランド(County Antrim,Northern Ireland)にある玄武岩の石柱群、世界自然遺産「ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸(Giant's Causeway and Causeway Coast,1986 Criteria:N(i)(iii))」と比べてみても、勝るとも劣りません。また、スコットランドの「フィンガルの洞窟(Fingal's Cave)」にある玄武岩の柱状節理と比較しても、何ら遜色がありません。澎湖玄武岩自然保護区にある3つの島嶼は、自然が生み出した偉大な傑作です。世界の舞台に立ち、人々に観賞してもらい、そして感動してもらうだけの資格を持っています。


選出理由 

澎湖玄武岩自然保護区では、地底から流出した火山溶岩が冷え固まり、様々な柱状玄武岩を形成しました。また、玄武岩によりで出来た島嶼が海蝕作用を受け、海蝕崖、海蝕洞、海蝕柱、海蝕溝など、美しい自然景観を生み出しています。アジア地域の諸島では珍しく、まさに世界遺産登録基準第7項に合致するものです。
澎湖玄武岩自然保護区の地質年代は、台湾海峡の火山溶岩が最も活発だった時代のものです。現在に至るまで非常に独特で優美な玄武岩の地理景観を維持しており、その雄大な柱状節理とバリエーション豊かな地形の変化は、世界遺産登録基準第8項に合致します。
澎湖玄武岩自然保護区は、辺境の地にあり、海流が激しく、岸壁が険しく切り立つため、訪れる人もまばらです。このため毎年4月から9月までは、保護種に指定されている希少鳥類にとって絶好の繁殖場所となっています。2002年には絶滅危惧種の海洋野生動物であるアオウミガメが産卵のために上陸しました。これは研究や保護する価値が極めて高いもので、世界遺産登録基準第10項に合致します。