台中州庁は日本統治時代の建築物で、現在の監察院(旧台北州庁)と国立文化資産保存研究センター(旧台南州庁)と同時期に設計、建設された姉妹建築です。これら3棟の建物は、当時の一等庁と位置付けられた新庁舎で、日本統治時代の官公庁建築として大型の代表作でもあり、台湾の建築史において重要な役割を果たしました。
台中州庁の起工は1912年で、1913年に第1期部分が完成。4度の拡張を経て、1934年に現在の規模となり、日本統治時代の台中州の行政の中心でした。日本による統治終了後も、ここに台中市政府が置かれ、2011年に台中市が台中県と合併して直轄市となり、市政府が新たな庁舎に移るまでここが使われました。2003年、歴史建築百景の79位に選ばれました。
台中州庁は森山松之助によって設計されました。全体としてはフランスのマンサード風で、ドリス式、イオニア式の列柱やマンサード屋根が、官公庁としての威厳を色濃く表しています。補強れんが構造で、日本統治時代の官公庁建築の代表作です。
台中州庁の正面はマンサード屋根が目を引き、建物本体はL字型の2階建てで、左右にある角楼に両翼の建物がつながる設計です。1階入り口はドリス式、2階にはイオニア式の列柱を採用。奥まったバルコニーが正面の陰影を際立たせています。台中州庁の建物は、政治的な地位や街における重要性を示すため、さらには、台中全体の都市計画に沿って、正面入り口を主要道路の角に設置しており、日本統治時代の官公庁建築の特徴が表れています。
2018年10月、台中市政府と文化部は、台中州庁園区に関する協力意向書を締結。台中州庁を修復した後、旧市議会と周辺エリアとともに、国立台湾美術館がこれらを引き受け、「国立台湾美術館台中州庁園区」として整備します。2019年4月から修復工事を開始し、2021年に完成予定です。
台湾芸術史の再現を目標として、今後、台中州庁を台湾近現代美術専門の展示の場とすることや、旧市議会での国家レベルの撮影機関設置、さらには、国家レベルのアート・アーカイブセンター設置を計画しています。文化部は2018年、米カリフォルニア州アーバインにある順天美術館から、台湾芸術家の作品600点の寄贈を受けており、台中州庁にはこれら作品を展示し、台湾芸術史の再現に向けた重要な一歩とします。