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台中国家歌劇院

  • 日付:2021-02-09
台中国家歌劇院

建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した日本を代表する建築家、伊東豊雄(Toyo Ito)氏が設計した台中国家歌劇院は、高級住宅に囲まれた台中市の第7期再開発エリアに位置します。独特の曲面壁と柱のない構造のため、施工が非常に難しく、世界で最も建てるのが難しい建築物といわれています。「音の洞窟(Sound Cave)」をコンセプトとしており、国際的メディアのロイター社が選ぶ「世界九大新ランドマーク」の一つに数えられています。


伊東豊雄氏は、「良い建築というのは居心地がいいものだ」と述べています。歌劇院は、伊東氏が目指す自然との共生という要素を重視しており、洞窟のような空間に自然光や心地良い風、流れる水を引き込んで快適度を高め、内と外の空間を融合。各劇場やショップ、レストラン、スカイガーデンをつないでいます。


歌劇院の外観は、コンクリートの曲面壁と格子状のガラスのとばりでできており、酒瓶のようなフォルムがデザインされています。これには、舞台芸術の鑑賞は人を心酔させるという意味が込められています。特殊な工法で作られた曲面壁のため、見渡す限り全て、弧を描く曲線と流れ広がるような空間で、建築史上でも全く新しい空間形態となっています。独自の画期的工法が採用されたため、台湾コンクリート学会から「2016コンクリート工程優良賞」の特優賞を受賞しています。


歌劇院内は、58の曲面壁と、29の洞窟で構成されており、柱による支えがなく、洞窟のような、ほぼ直角の無い空間を作り出しています。それは、人々を感嘆させる神秘的かつ不思議な空間で、全ての曲がり角に異なるサプライズが待っています。


よく見ると、外壁には多数の青い小さな穴があることに気付きます。これは、光を通す呼吸孔のようなもので、昼間は採光の役割を果たし、夜には館内の光を外に放ってさらに彩りを添え、昼と夜とで異なる最高の趣を醸し出します。入り口から劇場の座席に至るまでの空間は、光影とシーンの変化に満ちており、人々を五感で感じる歌劇の旅に誘います。自然の光や風景を取り込むため、ガラスを多く使用し、屋内と屋外の境界をあいまいにしています。


歌劇院は地下2階、地上6階建てで、大劇場は2014席(2014年の落成にちなんでいます)、中劇場は800席、小劇場は200席。このほか、レストランやスカイガーデンがあります。


天井にある線状に並んだ点々は、世界で特許を取得している「ウオータースクリーンシステム」で、火災時には、火が広がるのを防ぐため、スプリンクラーで形成された水の幕が下りてくるようになっています。


空調は放射冷却パネルの床面を使用。床面にある円形のものは、冷房の送風口で、夜間は自動で換気しています。屋内は冷房を入れなくても、床下に隠された冷水が流れる管により、快適な温度を保つことができ、冷房が当たらなくて蒸し暑いといったことはありません。


そして、歌劇院6階のスカイガーデン。緑に満ちたここから台中市を見渡せば、爽快な気分を味わえます。


5年をかけて完成したこの歌劇院には、43億6000万台湾元が投じられ、2014年11月23日に完成、オープンとなりました。大劇場、中劇場、小劇場を備え、計約3000人を収容できます。


台中国家歌劇院は、昼間は曲線で形作られた建物が人々に驚きをもってたたえられ、夜には明かりの効果で、建物全体が彩られて、暗闇にきらめきを放っています。