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屏菸1936文化基地

  • 日付:2023-10-30
屏菸1936文化基地

台湾南部・屏東県屏東市にある屏菸1936文化基地(Pingtung 1936 Tobacco Culture Base)の前身は、1936年に設立された屏東菸葉廠(屏東たばこ工場)です。元の名称を「屏東支局菸草再乾燥場」といい、日本統治時代から屏東のタバコ耕作地での耕作技術指導や買い付け、加工貯蔵の作業を担っていました。1949年に国民政府が台湾に渡ってきてからは、「台湾省菸酒公売局屏東菸葉加工廠(タバコ加工工場)」となりました。このたばこ工場が担当する耕作地の面積は広がり続けて、南部・嘉義や東部・花蓮地区を超え、その拡大の幅は中部・台中をも上回りました。1953年、屏東菸葉加工廠は巻きたばこ部が設立されて「台湾省菸酒公売局屏東菸葉廠」と名称を変えました。1965年12月に巻きたばこ部が廃止され、この工場は再び、タバコの葉の乾燥加工が主要業務になりました。業務の必要に応じて、年を追うごとに工場が増築され、工場全体の敷地面積は約4.2ヘクタールに。屏東がコメ、ショ糖、タバコの生産で台湾をリードした時代の痕跡を刻むものとなりました。その後、専売制度が廃止されたことや禁煙政策、海外製たばことの競争といったことを背景に、国内のたばこ業の生産量は減少し続け、屏東菸葉廠は2002年10月、操業を停止。事業は屏東県内の内埔菸廠に移されました。

 

工場が閉鎖されてからの20年間、屏東県政府はたばこ工場の歴史や建築スペースの活用、文化財としての価値などについて、徹底した検討を実施。県政府は2010年、屏東たばこ工場の除骨加工区、再乾燥加工区、ボイラー室、中山堂を歴史建築として登録しました。修復、再活用を進め、産業遺産としての重要性から、2017年には歴史建築の登録を全エリアに拡大しました。

 

政府や各分野の学者、民間といった多方面の合意の下、「屏東県大博物館計画」が生まれ、屏東の産業史で非常に代表的な存在であるたばこ工場を文化を育む基地として活用することとなりました。「産業で屏東の物語を語る」「芸術で屏東のこころを描く」「子どもが屏東の未来を創造する」という戦略により、「屏東菸葉(たばこ)館」、「屏東客家館」、「屏東原民(先住民)館」、「没入型体験館」、「屏東県立美術館」、「屏東県収蔵庫」の設置を計画。博物館の専門知識を活用することで、地方の知識を保存し、盛り上げ、芸術文化資産を取りまとめ、協力するためのプラットフォームとします。そして、ダイナミック、オープン、サステナブルの精神で、県民と共に屏東の文化的魅力を伝承、解説、展示披露、創造し、観光客の皆さんに屏東を知っていただくためのもてなしの場にしていきます。

 

2021年冬、屏東の輝かしい産業の歴史を見てきたたばこ工場は、「屏菸1936文化基地」という新たな姿で地域の記憶を受け継ぎ、歴史的意義のある新たなランドマークとして生まれ変わりました。三角形を基本として積み重ねたものが文化基地のロゴとなっています。デザイナーは、この基地の歴史を知り、現場の雰囲気を感じ、「場域、陽光、聚集、連結」という四つのコンセプトでまとめ、色彩は、暖かみのあるダークグレーとライトグレー、さび色、若草色で表現。工場の三角鉄骨構造を基本エレメントとして、小さなエレメントを積み重ねて記憶と時代を表現し、新鮮さも生み出しています。しっかりとした基礎の積み重ねと人の集まり、絶えず生まれてくる生命力と創造力を象徴しています。

 

文化基地は段階的に開業していく予定で、第1段階として、たばこ館、客家館、没入型体験館、特別展示エリア、商業エリアがオープン。将来的には、さまざまな展示やイベントを行い、屏東県博物館のブランドを作り上げ、地方文化の自信を確立して、住民と土地の関係を深めます。そして、住みやすく、世界に立脚する屏東県の文化的先駆け、後ろ盾になります。