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建築家 | 郭中端

  • 日付:2023-04-10
建築家 | 郭中端

郭中端は1949年、台北市に生まれました。淡江大学建築学科を卒業後、日本に留学し、日本大学大学院の工学修士、早稲田大学の建築、都市工学博士を修め、日本の建築家である吉阪隆正氏に師事します。1987年、日本の建築設計事務所である象設計集団で、台湾東部・宜蘭県の冬山河親水公園の設計に携わり、台湾のランドスケープアーキテクチャーに全く新しい風を吹き込みました。

1992年、夫で建築家でもある堀込憲二氏と共同で、「中冶環境造形顧問有限公司」を設立。「近自然工法」を理念としてランドスケープデザインを行っています。その作品は、台日融合のアイデンティティーを表現。よりよいものを追求し、伝承を重んじる職人の姿、また、万物に神が宿るという謙虚な姿勢を兼ね備え、国民の美学と道徳の素養を積極的に推進しています。

作品には、明池森林遊楽区や卑南文化公園、北投温泉親水公園、陽明山前山公園、新竹護城河、台湾南西部の嘉南平原にかんがい施設を整備した八田與一を記念した八田與一記念園区、中都湿地公園、新竹の南寮漁港などがあり、多くの賞を受賞しています。例えば、陽明山前山公園は2016年に国家卓越建設賞を、2017年には世界最優秀建築賞(FIABCI World Prix d’Excellence Awards)などを受賞。中都湿地公園の設計案は、世界最優秀建築賞の環境部門大賞や国家卓越建設賞、中華建築金石賞を受賞しています。

郭中端は、字形によって分類されている中国最古の字典「説文解字」を用いてよく説明します。郭中端によると、中国語の「景観」という2文字は、人によって営まれる空間的特性を表しています。また、「生態」は英語のecologyから解読すると、経済(economic)、生態(eco)を含みます。言い換えると、景観とは環境生態と住民の生活や利便性とのバランスをいかに取るかということを重視して計画するものです。「人が半分をつくり、もう半分は天がつくる」。これが郭中端の設計哲学。郭中端は、公共のランドスケーププロジェクトでは、政府と市民に同時に向き合う必要があり、土地に対して深い思い入れがなければ、長期にわたる取り組みはできないと言います。

郭中端は水のシステムを重視しています。元の生態に従い、歴史文化に光を当て、現地の技術を活用し、新たな建物は多く建設しない、これらはいずれも郭中端のランドスケープにおける主張です。郭中端は、台湾で心地よいと感じてもらえるランドスケープデザインにするには、「古」と「清」が重要だと言います。「古」という字は、修復の視点から、建設時に過去のよい建物を残して、次の世代に伝えていくことです。「清」は水と緑を意味します。郭中端はこの二つをランドスケープデザインに盛り込み、忙しく、ストレスの多い生活を送る現代人に、リフレッシュできる環境を提供したいと考えています。

「水」の要素は郭中端のランドスケープデザインにおいて非常に重要な役割を果たしています。郭中端によると、ランドスケープデザインは環境生態に影響を及ぼすもので、水は命のバロメーター。人は万物の霊長として、ほかの生き物のことも考えなければなりません。生態がなければ、人類もやがてこの世にいられなくなります。ましてや、人類の命はほかの生き物との共存によって豊かになっているのです。

2021年、郭中端は第22回中華民国国家文芸賞を受賞。ランドスケープアーキテクトとしては初の同賞受賞でした。郭中端は台湾ランドスケープアーキテクチャー界のパイオニアであり、また、ランドスケープの美学を土地倫理に融合させた戦士でもあります。長年にわたって、土地を守り水に親しむという専門家としての良心を持ち続けて創作を行い、台湾の河川活性化と親水の美学というニューウエーブをもたらしました。土地と環境に対する尊敬の念がデザインに先立ち、美に関しては業界を超えた協力の大胆性を備え、変化に富むその取り組みは、台湾の現代ランドスケープアーキテクチャー分野において、世代や業界を超えた融合の新たなモデルになっています。

(画像は国家文化芸術基金会、MatjazTancic、郭中端提供)