台湾の絵本作家、林小杯(リン・シャオペイ)は、ストーリーと絵の両方を手掛け、その作風はさわやかでオリジナリティにあふれ、大人、子どもを問わず多くの読者をひきつけています。今までに、『全都睡了100年』『歩歩蛙很愛跳』『非非和她的小本子』『宇宙掉了一顆牙』など著書多数。また、台湾の文化部(文化省)が主催する出版業界の権威ある賞、金鼎奨や産経児童出版文化賞を受賞しています。
絵を描くことが好きだった林小杯は、文化大学美術学科に進学します。大学2年生のとき、クラスメートが持ってきた絵本を目にし、こうしたスタイルの出版物に魅了され、台湾人にもこうした作品を作ることができると気づき、絵本創作に対する気持ちが芽生えたのでした。
林小杯の描く絵の流れるようなスケッチラインは、大学1年生のときに培った基礎によるものです。当時、クラスメートとよく舞踏学科の教室に行き、動きのある人物をスケッチしていました。始めたばかりのころは、ふくらはぎの曲線や、腕の線、跳躍の軌道を少しつかめるだけでしたが、徐々に、現在のような独特の画風を完成させていきました。
美術学科を卒業後、勇気を振り絞って出版社に連絡を取り、児童向け出版物のイラストを描くようになります。その後、台東師範大学大学院児童文学研究科に進み、権威ある絵本賞である信誼幼児文学奨に応募。『假装是魚』が佳作に選ばれました。この作品はデビュー作でもあります。
林小杯の画風は大変分かりやすく、絵のラインも筆致も自由闊達で、作品中の主人公が絵の中を飛び回っているようです。林小杯の描く絵本はいつも、ファンタジーと日常生活が混ざり合った世界。林小杯は、一輪の花が咲くこと、ヒヨコが卵の殻を破って出てくること、こうした平凡の中に潜む事柄こそ、本当に人を感動させる奇跡だと信じています。林小杯は、生活の中のほんの小さなことを紙上の生き生きとした主人公に作り上げるのです。
児童書作家の多くは、教訓や知識を伝えることが創作とセットになりがちです。しかし、林小杯は、子どもの連想を広げ、さらには、自分でもある種納得しています。「シリアスな物語や絵は描けないのです。もし、一冊の絵本が、読んだ方に素晴らしい読書体験をもたらせたなら、それは素敵なことですね」と林小杯は言います。
2014年、林小杯は、祖母の古いミシンをテーマとして、生活の中の細かな事柄にあふれた作品『喀噠喀噠喀噠』(日本語訳『カタカタカタ おばあちゃんのたからもの』)を出版。子どもから大人まで、幅広い年齢層の読者が、その素晴らしさに魅了されました。同作品は、文化部の翻訳出版助成作品に選ばれ、2019年には、日本の第66回産経児童出版文化賞を受賞。台湾の作品としては初の受賞でした。
林小杯は、美術館での創作も行っており、さらには、読み聞かせの活動を通して、子どもたちと一対一で触れ合っています。林小杯は、創作を続ける原動力について、「一生描き続けられたら、それは最高に幸せなこと」と述べています。