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台湾カルチャーミーティング第3弾「フォルモサの涙」、著者・陳耀昌氏が忘れられた台湾史にいざなう

  • 日付:2023-08-25
台湾カルチャーミーティング第3弾「フォルモサの涙」、著者・陳耀昌氏が忘れられた台湾史にいざなう

台北駐日経済文化代表処台湾文化センターは今年度、台日作家との交流イベントである台湾カルチャーミーティングを3回開催しています。楊双子氏の「台湾漫遊鉄道のふたり(原題:台湾漫遊録)」、陳思宏氏の「亡霊の地(原題:鬼地方)」をテーマとしたミーティングは大変好評でした。これに続いて、8月19日、台湾の医師であり作家でもある陳耀昌氏の「フォルモサの涙 獅頭社戦役(原題:獅頭花)」のトークイベントが開催されました。イベントでは、日本語訳を担当した天理大学名誉教授の下村作次郎氏も招いて対談が行われ、作中の時代背景や歴史の流れを紹介しました。

 

イベントには、台湾の歴史や文学に興味を持つ人々が多く参加し、中には長崎から東京の会場まで訪れた人もいました。陳耀昌氏はまず、なぜ60歳から歴史小説を書き始めたかを紹介。陳耀昌氏の専門は血液学と骨髄移植、幹細胞研究です。あるとき、一族の先輩から陳家の女性の先祖にオランダ女性がいて、それが鄭成功の麾下の将軍・陳澤の夫人だったということを知ったといいます。これがきっかけで、自らの一族の歴史をさかのぼり、台湾の歴史に関する創作活動を始めたと語りました。そして2009年、韓国のホテルで便箋に書いた「フォルモサに吹く風(原題:福爾摩沙三族記)」の1ページ目から創作活動の道がスタート。「台湾のために歴史を残す」「歴史のために台湾を書き記す」を二つの大きな目標として励んできたと述べました。

 

続いて、陳耀昌氏は、「フォルモサの涙 獅頭社戦役」の歴史考証について紹介しました。また、翻訳者である下村作次郎氏は、本書のカバーデザインが表す意味を解説し、陳耀昌氏の小説に登場するフィクションの人物や歴史観を紹介。日本の皆さんを小説を通して、その失われた歴史に引き込みました。

 

「フォルモサの涙 獅頭社戦役」は陳耀昌氏の「フォルモサに咲く花(原題:傀儡花)」に続く作品で、「花シリーズ3部作」の第2部に当たります。出版前に「新台湾和平基金会」の台湾歴史小説賞を受賞しています。この小説では、1875年の清朝による「開山撫番」政策の下、台湾南部・屏東の原住民(先住民)と清朝政府軍による戦争、その影響を大きく受けた原住民と漢族の恋が描かれています。