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国立台湾美術館「台展復刻・名作再び」プロジェクト 台湾美術史発展の本来の姿に寄り添う

  • 日付:2020-03-23
国立台湾美術館「台展復刻・名作再び」プロジェクト 台湾美術史発展の本来の姿に寄り添う

日本統治下の台湾で開催されていた官展「台湾美術展覧会」(台展)と「台湾総督府美術展覧会」(府展)の図録がこのほど復刻出版され、発表会が3月23日、台北市内で開かれました。復刻出版は台湾美術史の再構築を目指す文化部(文化省)の政策の下、国立台湾美術館(台中市)が「台展復刻・名作再び」と題して企画し、美術雑誌「芸術家」が出版を手掛けました。プロジェクトに参加した成功大学(台南市)の蕭瓊瑞教授は、忘れ去られていた多くの芸術家が今回の復刻で日の目を見ることになったと話し、出版と同時に台湾美術史の研究の新たな始まりとなったと喜びを示しました。

台湾の近代美術は日本統治時代に発展を遂げたとされます。台湾美術館の林志明館長によると、当時台湾には専門の学校がなく、展覧会での交流が学習の機会になっており、官展への入選はその芸術家の影響力を決定づけるものだったといいます。1927年から10回にわたって開催された台展と、1938年から6回開かれた府展は、楊三郎、陳澄波、郭雪湖、林玉山など多くの著名な台湾人画家を輩出しました。

今回復刻したのは、台展の図録10冊と府展の図録6冊です。出展全作品の目録や両展が開催されていた時代の重要な出来事を示す年表などを収録した別冊も合わせて刊行されました。

復刻版の元となった原本は全て、美術雑誌「芸術家」を創刊した何政広さんのコレクションです。紙の劣化が進んでいた影響で、作業は困難を極め、紙面のスキャンや絵画の修正など、完成まで1年を要しました。また、復刻作業において、図録中の日本語に多くの誤字があることも発覚しました。ですが、あえて修正せずに出版したといいます。その意図について林館長は、誤りも歴史の一部だとし、「歴史を変えるわけにはいかなかった」と説明しました。

復刻版は原本通り、白黒印刷が採用されました。一方の別冊は、陳澄波や林玉山の子孫から寄せられた絵画の元データを用い、絵がカラーで印刷されています。

林館長によれば、台湾美術館では台展や府展を紹介する展覧会を企画しており、年末の開催を予定しているそうです。