画家の奈良美智さんが台湾で初開催する個展「奈良美智特展」の開幕式が11日、会場の国立台北芸術大学関渡美術館（台北市）で開かれました。奈良さんは展示作業を終えてすでに台湾を離れましたが、ビデオメッセージを寄せました。その中で、個展開催は「本当に光栄」と喜びを示し、「一生忘れないと思います」と感慨深げに語りました。同展では、奈良さんが台湾のために制作した新作「Hazy Humid Day」や海外初展示となる「Miss Moonlight」のほか、デッサンや彫刻など計53点が展示されます。
新作「Hazy Humid Day」は「Miss Moonlight」と釣り合う作品として作られました。代表作の「Midnight Truth」など奈良さんが気に入っている作品の多くが米ロサンゼルスの個展で展示されている中、台湾の個展のために「Midnight Truth」に匹敵する作品を描く必要があると感じ、新作を制作したということです。昨年秋、当時東京で開催中だった「STARS展：現代美術のスターたち―日本から世界へ」に展示していた「Miss Moonlight」を台湾で展示可能だと気付き、この作品と合わせられる同様のサイズの作品が必要だとの考えが生まれました。しかし、同様の質量の作品を描くには精神が最高の状態になる必要があったため、すぐには筆を動かさず、今年1月末ごろになって制作に着手。10日間前後で完成させたということです。
奈良さんはビデオメッセージで、「東日本大震災の時に台湾から多額の義援金をいただき、日本の人は感謝している」と言及した上で、「お返しの一つとして僕が来られた。精一杯の展示はしたつもりです」と真摯な面持ちで語りました。個展は台湾南部への巡回も決まっており、7月に高雄で、11月には台南でそれぞれ開幕します。奈良さんは「自分がいて初めてできるような展示構成にしているので、また来ます」と笑顔を見せました。
会場ではデッサンを中心に1984年から2021年までの作品を展示。隅々にまで工夫が凝らされ、奈良さんが作品や展示に込めた思いを感じることができます。
開幕式には中華文化総会の会長を兼務する蔡英文総統や日本台湾交流協会台北事務所の泉裕泰代表（大使に相当）、李永得文化部長（文化相）などが出席しました。
奈良美智特展は12日に開幕。関渡美術館では6月20日まで開かれます。